あらゆるプロセスでお客様をご支援します。
・設計、調達、製造 どの切り口からでもご対応します。
・それぞれのプロセスにおいて、OKI製品のモノづくりで培った高い品質をご提供します。
当社従業員である渡辺氏が社会人大学院コースを修了し博士号を取得いたしましたので、ご紹介します。
博士号を取得した渡辺氏
OKIネクステックでは旧長野沖電気の時代から、鉛フリーはんだに関する基礎研究に取り組んできました。2006年のRoHS指令により、EUへ輸出する電子機器への鉛の使用が禁止されました。はんだ接合に使用されるはんだ材料はスズ(Sn)と鉛(Pb)の合金であったことから、RoHS指令に対応するためはんだの鉛フリー化が進みました。現在ではSn-3%Ag-0.5%Cu(SAC305)鉛フリーはんだの使用が一般的となりました。SnPbはんだで使用してきたフローはんだ槽でSAC305を使用したところ、はんだ槽に穴が開く浸食現象(エロージョン)が発生しました。図1にエロージョンによりはんだが流出した写真を示します。これは鉛フリーはんだがSnPbはんだに比べ融点が高く、他の金属への浸食力が強いためでした。はんだ槽のエロージョンに対しては、国家プロジェクトにより、はんだ槽表面へのコーティング処理が有効であることが確認され、現在ではエロージョンは抑制されております。 一方、手はんだ付用はんだこて先や、ポイントはんだ付装置用のノズルは、はんだに対して一定の『ぬれ性』を示す必要があることから、はんだ槽でのコーティング処理は適用できません。そのため新しいこて先やノズルに交換するほか対策が無いのが現状です。こて先およびノズルのエロージョンを図2に示します。こて先やノズルのエロージョン抑制には、はんだに対しぬれ性を有する鉄(Fe)などの金属に、耐エロージョン特性を付与させた材料の開発が必要となります。
図1 はんだ槽のエロージョン
図2 こて先のエロージョン(左)およびノズルのエロージョン(右)
このテーマに関して、信州大学―小諸市産学官連携協議会と共に材料開発に関する共同研究を実施し、高い材料特性を有する多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を用いた耐エロージョン材料の基礎評価を行いました。Ni複合めっきを用いて作製したNi-MWCNT複合めっき材料がSAC305に対し耐エロージョン特性を有することを発見しました。
産学官共同研究によりMWCNTがSAC305鉛フリーはんだに対する耐エロージョン特性に有効であることが示されたことから、はんだこて先やポイントはんだ付装置用ノズルに使用されるFeを用いて、Fe-MWCNT複合めっきを作製し、材料レベルでの耐エロージョン特性に関する基礎評価を行いました。Fe-MWCNT複合めっきの耐エロージョン特性評価結果を図3に示します。Fe-MWCNT複合めっきはFeのみに比べ、耐エロージョン特性が極めて高ことが確認されました。本研究成果をこれまでに国際会議や学術論文に発表してきました。
図3 エロージョン特性評価結果
研究を担当した渡辺氏は、群馬大学大学院の博士後期課程社会人コースに入学し、研究レベルの高度化と学位取得を目指し勉強に取り組んできました。SAC305鉛フリーはんだに対するナノ材料を用いた耐エロージョン材料の開発を研究テーマとして、詳細な基礎研究を重ね論文を執筆し、博士号を取得いたしました。
企業において基礎研究は、直接ビジネスに結びつきにくい点から敬遠されがちですが、基礎研究こそモノづくりの本質を知ることができ、また様々な分析技術や解析力の向上が図れます。その積み重ねにより高いレベルの生産技術へとつながります。当社のEMS事業では、基礎研究で培った技術力で、お客様へ自信を持って高品質の製品をお届けいたします。
記事に掲載した研究成果は、下記の論文の内容を抜粋いたしました。
本研究成果を『第37回 電⼦デバイス実装研究委員会』で講演させていただきました。
外部サイト『ナノチューブ複合めっき法を用いた鉛フリーはんだエロージョン防止用材料の開発』